朝方に「‘バタバタ、バタバタ’」と急な土砂降りの雨音で目が覚めた。朝食を済ませ支払いの用意をしておいた。雨は止んでいた。オ−ナ−さんが奧から出てきた。「長い間、お世話になりました。支払いは50ポンド(2日間)ですね」と彼女を見た。「はい、そうです。ところで街は良かったですか」と尋ねた。「とてもね。もう少し滞在できればね」と僕。彼女は玄関まで見送ってくれた。よく食べよく寝て気持ちがいい。これからの予定を頭の中で組み立てながら、街まで歩くことにした。ダブリンでトランクを預けたので身軽だ。背負いリュックとポシェットだけだ。「ウイリアムズ通りで本を、ショッピングセンタ−でアイリッシュ陶器を買う」など。最後の昼食は帆船で食べようと決めた。石畳の歩道の感触を味わいながら、大きな本屋さんの前に来た。EASONとカンバンが掲げられている。今日はアコ−デイオンの民謡は聞こえてこない。1階は混雑している、先ず2階に上がった。「部分的バ−ゲンセ−ル」をやっている。料理などの本に半額の赤札が貼られれている。アイリシュ料理の本がス−プ、サラダ、ソ−スの3冊セットになっている。しかしソ−ス編だけがない。女性の店員さんに「ソ−ス編がないのですが」と聞くと、「多分ないでしょう。でも、探してきます」と奥に入って行った。暫くして、「有りました。50%引きです」と手渡してくれた。
再び一階に降り雑誌、新聞のコ−ナ−に行った。日本と同じで立ち読みで混雑している。棚に10種類ほどの新聞が並んでいる。ロンドン、ダブリン発行の新聞に混じり、アメリカのものもある。店員さんに「ゴ−ルウェイの地方新聞はどれですか」と聞くと、『演説台』だと言ってくれた。その新聞を一部買い店を出た。Uタ−ンしてショッピングセンタ−に向かった。昨日と同様賑やかだ。ウイリアムズ通りからショッピングセンタ−に入った。インテリアの店だけは、1階から2階までを1店舗で占めている。1階には鍋、包丁、スプ−ンなどの実用品が、 二階に上がるとトレ−、レ−ス編み、アイリシュ陶器がずらりと並んでいる。二階は店長らしき中年男性がお客の対応をしていた。レジの若い女性店員さんは、ウエ−ブの栗色の髪が肩にかかっている。とてもプロポ−ションいい。化粧もヘビ−でアメリカ映画の女優にも負けない。買ったアイリッシュ陶器を彼が綺麗に箱詰めし、彼女がレジをしてくれた。ここから 1Fの帆船のパラソルが見えている。今日は舞台上のテ−ブルも空席が多い。レジから少し離れた小さいテ−ブルに、店員さん(金髪)がたばこを吸っている。
陳列の中にはソセ−ジ、肉のソテ−あえなど美味しそうだ。サンドイッチとポテトサラダ、最後のコ−ナ−でス−プを買って「金髪さん」の隣に座った。「休憩ですか」と声をかけると、「ええ、交代でね。30分だけなの」と、ニッコリしながら僕の方に向きを変えた。白いワンピ−スの上にブル−の制服を着ている。足を組みながらたばこを吸う彼女のム−ドは「さま」になっている。「この仕事はバイトなの、彼はいるの」と聞いてみた。「そうバイトよ。友達はいるよ」とあっさりと答えた。帆船横の階段近くに、TONNYーQUINNと看板の小さなお店がある。女性用の化粧石鹸やシャンプーなどが売られている。小さい店なのに2人の若い女性の店員さんがいる。一人は背が高く、一人は普通の体格で二人とも栗色の髪をしている。「いい香りがするね」というと、「彼女のおみやげにいかが」と背の高い方の店員が相手してきた。「一緒に写真を撮ってくれるなら一本買うよ」とおどけると、ニコッと笑って「いいわよ。買ってくれるのなら」と彼女は、店の中にいる店員を呼んだ。出てきたその彼女にカメラを渡し僕の横でポーズをとった。外は人も車の量も変化なく、ただゴ−ルウエイの歴史だけが刻まれて行く。とび抜けて高く新しい高級ホテルだけが、ケネディーパーク前でいつもながらの威容を誇っている。

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